柔道家・山下泰裕が語るプーチン大統領の素顔 「あの時の物凄くおっかない顔が忘れられない」「もう政治は懲り懲り…」【ロシア外交】

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 プーチン大統領の素顔を柔道家・山下泰裕が語る 「あの時の物凄くおっかない顔が忘れられない」「もう政治は懲り懲り…」
 



【ロシア外交】
柔道家・山下泰裕が語るプーチン大統領の素顔 「あの時の物凄くおっかない顔が忘れられない」「もう政治は懲り懲り…」
2017.7.16 15:00

山下泰裕氏


 柔道家としても知られるロシアのプーチン大統領が尊敬する日本人として名前を挙げるのが、全日本柔道連盟の山下泰裕会長(60)だ。平成12年以降、毎年のように顔を合わせ、交流を深めてきた。折しも日露関係は両首脳が北方領土での共同経済活動を目指すことで合意するなど重要局面に入っている。その鍵を握るのは絶大な権力を握るプーチン氏に他ならない。山下氏が垣間見たプーチン氏の素顔を聞いた。

 ◇ 

 プーチン大統領と何回会ったかって? 20回を超えることは間違いないけど、そこから先は数えていないです。

 私に会うときはいつも笑顔のプーチン大統領だけど、26年8月にロシアで行われた柔道の世界選手権大会の最終日に会ったときは違った。

 その年の9月にロシアで「日露フォーラム」があって、森喜朗元首相が行くことになっていたんです。ところが、プーチン大統領とのアポイントメントが取れないという情報が入っていた。それで「日露フォーラムに森元首相が行きます。この機会にお会いしたいと思われていて、時間を作ってもらえませんか」という話をしたんだよね。そしたら「ヨシ(森氏)が来る? そんな話は聞いてないよ。その時期だったらモスクワにいるよ」って言われたんですよ。

 そこまでは良かった。ところが「安倍晋三首相はプーチン大統領とのリーダーシップによって、日露関係を劇的に改善させたいと思っています」と伝えたら、ものすごいおっかない顔になってさ。プーチン大統領は「安倍が言っていることと日本がやっていることは違う」と言ったんだ。

 ウクライナ南部クリミア半島併合を受けて、日本は欧米諸国が行った対露経済制裁に同調したからでしょうね。ただ、プーチン大統領はハッとわれに返ったんです。「ここでそんな話をしても仕方ないな。ヨシが来たときに直接聞いてみよう。あなたが日露関係に加わることは非常にいいことだ」と笑顔で親指を突き立てていました。

 その後に森元首相がプーチン大統領と会い、日本の制裁は実害のないものだと説明されたと聞いています。私がキーマンだって? 違うよ。ただ、人生の中で初めて政治的役割を果たした。もう懲り懲りだと思ったね。私は柔道家であり教育者だ。政治家でも外交家でもない。身の程をわきまえてやらないかん。

 プーチン大統領が私と交流してくださる理由は分かりません。本人に聞いてください。

 ただ、私の現役時代は冷戦時代です。所属する東海大創設者の松前重義先生は「共産主義とは相いれないが、パイプは持っておかないといけない」という考えだった。それで、ソ連代表選手が東海大学に来ると、私もウオツカを飲んだり黒パンを食べたり、兄弟みたいに接しました。プーチン大統領はそういう選手とも交流があるから「ヤマシタというヤツがいる」ってポジティブな話を聞いていたのかもしれないね。

 プーチン大統領は昔は不良少年に近かったけど、柔道を始めてから変わった。柔道では相手のことを研究し、どんな状況に置かれても精神状態を安定させなければならない。柔道で学んだことが政治活動に生きていると思います。

 プーチン大統領のモスクワにある別邸には(柔道の始祖)嘉納治五郎先生の銅像があるんです。プレゼントしたのは日本人じゃなくて、ロシアの政敵が恭順の意を表すためだったらしいんですね。プーチン大統領が一番喜ぶものが嘉納先生の銅像だと思ったんでしょう。

 プーチン大統領の情報収集力には驚かされます。たとえば、17年11月に当時の小泉純一郎首相との首脳会談のため来日した際に会ったときに「山下さん、柔道の交流を通して、ロシアのテロで傷ついた北オセチアの柔道家を励ましてくれるということを聞いています。お礼を申し上げたい」と言われた。

 日本で開く大会に北オセチアの柔道選手を招待する予定だったんです。でも、それは翌月の予定で、水面下で動いていた話だった。なんでこれからやることまで知っていたのか。そういうことは何回かあった。強いリーダーがいると、組織はトップが喜ぶ情報を上げようとするんですね。

 (24年3月に北方領土問題について)プーチン大統領が「引き分け」と言った意味は、分かりません。柔道の試合では弱い選手が引き分けを狙ったり、お互いの力量が伯仲して勝負がつかなかったりするケースはあるけど、両方が引き分けに持ち込もうという試合はないですね。

 素人の判断で言うと、両国民が納得するような解決って難しいんじゃないかと思うんです。ただ、日本とロシアは隣国で持ち味が違う国だから、補完しあえる関係です。その関係がいい形になれば東アジアの不安定な情勢にも大きな影響力があるんじゃないでしょうか。

 ロシアは隣国であり、大国です。柔道を通した草の根交流が日本に対する関心を呼ぶことができるかもしれない。日本のプラスになるために柔道が果たすべき役割があるのであれば、その役割を果たしたいと思います。(今仲信博)

■山下泰裕(やました・やすひろ)

 昭和32年、熊本県生まれ。59年のロサンゼルス五輪柔道無差別級で金メダルを獲得。世界選手権3連覇、全日本柔道選手権9連覇などの偉業を成し遂げる。59年に国民栄誉賞受賞。現在は東海大副学長を務め、今年6月に全日本柔道連盟会長に就任した。 








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